murmur * 2023

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2023.11.24

 

 サイトにちらほらアップしていたおはなしを、趣味の範囲におさめることにしました。
 書きあがったときは現在お世話になっている版元さんに提出するつもりだったのですが、昨今の情勢を見て……なんというか……とてもセンシティブな問題を扱っているので、もう少しどころかもうだいぶかなり慎重になろうと考えました。
 本来はセンシティブとか言っていないで問題にしていかなければならなかったことで、現在そのようになっているのは個人的にはよいことだと思っています。そして、わたしがやっているのはあくまでも創作であり、現実の社会に物申したいと思っているわけではありません。
 フィクションはフィクションであって、リアルではありません。創作と現実は別物です。
 ですが、特に昨今はSNSが盛んで色々な方を見かけるようになりました。「フィクションとリアルの区別はついている」と言いながら、区別できていないとしか思えない方が散見されます。わたしはSNS上をあまり浮遊しないのですが、それでも目には入ってきます。
 これまでの様々な出来事から、『現実と創作は異なる』、『ごちゃまぜにしてはならない』けれど、『創作は現実にじゅうぶんな影響を与えうる』ことがどんどん明らかになってきました。
 よいことであればよいのです。サッカー漫画に夢中になった少年がプロのサッカー選手になって大活躍をする。インタビューで「漫画の主人公に憧れて」と言って笑う。素晴らしいことだと思います。でも、哀しいことに、マイナス部分の実現をするひとが確かにいる。
 わたしが女性だからその部分が特に目に留まるだけかもしれませんが、マイナス部分の実現にあたる場所には、女性や子どもの性があることが多いように感じます。成人した男性が女性や子どもに矛先を向けるだけでなく、女性の中にも女性や子どもに矛先を向ける方がいる。
 わたしはそれがとても怖い。
 女性や子どもの脚色された性を現実と結びつけ、この世に実在する女性や子どもにそれを投影させ、しかもそのことについて疑問や違和感を抱かないひとがいるらしいというのは、わたしにとってはとても怖いことです。
 加害行為がエンターテインメントとして一部のひとに楽しく消費されているのが恐ろしい。
 いま、そういったところが明るみに出て、どうにか是正しようという意識が広まってきているように思います。
 そういった中で、女性差別が蔓延り、妊娠や出産といった女性の性が軽んじられている設定を含むこの作品を世に出すのは勇気が必要だなあと思ったということです。わたしが女性差別や、女性や子どもの性を軽んじることを是として思って書いておらずとも、そのように受け取るひとが現実にいるのだと知ってしまったから慎重になっているのです。
 このおはなしの舞台はとある別世界です。ここでいう女性差別は現代のものとは多少異なり、中世的なものです。本質的には何も変わらないのですが、少なくとも法律の表面上においてはひとりの人間として認められている現代の現実を生きるわたしたちとは違い、文字どおり人間扱いされてこなかった時代をロールモデルにしています。まあ中世と呼ばれる時代はどこの国でも男性にも人権なんてものはなく、そもそも人権という概念自体がなかったのですがそれはまた別の問題なので……
 女性は子孫を残すために必要な『物』であるという考え方がデフォルトで、子どもに至っては『子ども』という概念すらほとんどありません。小さく未熟な大人という扱いです。愛情がないわけではないけれど、必ずしも守らなければならない対象とはならない。
 そこに種族間の上下が加わっています。
 上位の種族と下位の種族がおり、上位の種族では男女同権だけれど異質な者に対する差別があって、下位の種族においては完全なる男尊女卑で、女性には尊厳も権利もなく、彼女たちはただ子どもを産むことだけを求められています。
 現実の多くの国々でかつてそうであったように、さらには守るべき対象としての子どもという概念が存在しないため、まだ幼いうちから性にかかわることになります。
 ただ、「まだ幼いうちから」は現代的な考え方に即しているものなので、その世界でこの感覚を持っている者は少数です。寿命が短ければ必然的に、現在でいうところの妊活時期も早まるでしょう。そういう世界です。
 女性が極めて差別的に扱われている(種族がある)、まだ幼いうちから性とかかわり、しかもその中には男性を性的に満足させるための努力が含まれる(種族がある)といった点が、いまのこの状況、情勢に逆行しています。
 繰り返しますが、 創作 です。
 フィクションです。
 ファンタジーです。
 そういった女性にとってあまりにもしんどいところにいるお姫様に、男女同権の種族に生まれたものの差別の対象であった男性が恋をする。
 あらゆる差別の中で最後まで残るのが女性差別だといわれています。女性差別が常識としてまかり通っている社会において、女性が能動的にできることというのは、現代のわたしたちが想像するよりもはるかに少ない。女性に差別意識を持たない男性がひとり一途で純粋な恋をしたところで社会は変わりません。
 でも、お姫様の世界は変えられるかもしれない。
 ジャンルとしては人類が古来より愛してきた伝統的なロマンスです。
 実際のところ、特にハイファンタジーはこういう世界が多いだろうなと思っています。その部分がフォーカスされないだけで。
 わたしが慎重になっている理由は上記の点が大きいのですが、もうひとつ、だめな方は本当にだめなカニバリズム(食人)要素がめちゃくちゃにあります。
 あとこれは単純にわたしのわたしによるわたしのための行動で、性にまつわる描写に向き合ってみようかなと思いました。わたしの場合は性嫌悪の理由がはっきりしているので、前向きに取り組むことで癒せるものがあるのじゃないかなと。
 誰かに恋をしたわけでも結婚の予定があるわけでもないのですが、もういい加減しんどい  嫌悪から恐怖し疲労困憊する自分に飽きています、怒るのにエネルギーが必要なのに似ている……
 これまでも性を取り扱ったことのある作品では愛情の行為としてきました。そうあるのが理想だと思っているからです。暴力とはかけ離れたものでなければならないと思っているからです。相手の心や身体を、欲望や暴力によって踏み躙ることなどけしてあってはならないと考えているからです。
 らくがき程度でもちょっと進んだいちゃいちゃを描きたいなと思っています。
 そんなわけでR18要素とR18-G要素がてんこ盛りです。
 でも『ハンニバル』だって最初に警告はあったけどドラマだったんだよな……
 社会的、種族的女性差別の文化を除き、虐待シーンや暴力シーンはありません。これは! わたしが! 本当に書けないし読めない!
 アウトな方によっては完全アウトな設定が多いので電子書籍化を控え、またバーンと開けっ広げることも控えることにしました。
 現在ひとりで、かなりクローズドな場所で楽しんでいます。といっても小説本編ではなくて、設定だとからくがきだとかばかりです。趣味で楽しむと決めたので、自己満足上等の気持ちです。
 R18要素とかG要素が感じられる部分はワンクッションやらセンシティブやらガンガン設定し、公開範囲もフォロワー限定にしてあります。いままだたぶんフォロワー誰もいないので(いいねの数もフォロワーの数も表示されない設定にしてある)、どなたもご覧になっていないと思います。ほんとうにひとりで楽しんでいる……たのしい……
 サイトにも旧ついったにも一部をアップしたので、おしらせくらいはするのが筋だろうと考えての本日雑記です。「小説は今年中に提出したいなあ」みたいなことも書いたことがあったので、「あれはどうなったの?」というもやもやをなるべく防止しようという意図もあります。楽しみにしているとかでなくても、わたし自身が「この前言ってたあれはどうなったの?」とか「この前やるって言ってたあれはどうなったの?」がものすごく気になる性質でスルーが苦手なものですから、はっきりさせたくなってしまう。
 わたしのやる気にはむらがある上かなりの飽き性なので、突然ぷつんと止まるかもしれませんが、とりあえず今のところはひとりで閉じられた場所で気楽に遊んでいます。不意の遭遇はよっぽどないと思いますが、もしも見かけたら、そして、受け入れられそうだなと思っていただけた方は、緩〜く眺めて緩〜く楽しんでいただければ幸いです。

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